秋になると恋愛映画を観たくなる人も多い。今回はその中から少し異色の一本、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984)を紹介したい。
※以下、ネタバレを含みます。
作品について
1984年公開、今年で40周年を迎える本作は、1月に4Kリマスター版が劇場公開され話題となった。残念ながら筆者は劇場で観ることはできなかったが、改めてVODで鑑賞した。
本作は昭和アニメを代表するTVシリーズ『超時空要塞マクロス』を再構築した劇場版であり、「歌」「メカ」「三角関係」がシリーズ全体を貫く基本テーマとなっている。
映像の迫力
まず驚かされるのは映像の力だ。現代ではCGが当たり前になり、映像のリアリティにしばしば感嘆するが、本作を観るとセル画時代特有の圧倒的な情報量に圧倒される。戦闘機やコクピットのメカ表現はもちろん、キャラクターの髪や瞳の動きに至るまで丁寧に描かれており、人の手で積み重ねた労力に感服せざるを得ない。
人間ドラマ
見過ごせないのは「ロボットアニメ」という先入観を超えた人間ドラマだ。主人公・一条輝を中心に、アイドルのリン・ミンメイと軍の上官・早瀬未沙との三角関係が物語を彩る。結末はここでは伏せるが、終盤にかけての感情表現や作画の熱量にはアニメーターの魂が宿っている。恋愛映画として見ても十分成立している点が大きな魅力だ。
「ミンメイ・アタック」の衝撃
そして本作最大の見どころは、クライマックスのいわゆる「ミンメイ・アタック」。歌の力で戦局を動かすという戦法はシリーズを象徴する要素だが、本作における描写は唯一無二であり、リン・ミンメイという存在を決定的なものにしている。少年時代に観た記憶がある人も多いだろうが、現代のCG映像に慣れた目で改めて観ると、むしろ新鮮で衝撃を受けるほどだ。
気になる点
シナリオに関しては、TVシリーズを観ているかどうかで印象が分かれるかもしれない。マックスとミリアの恋などはかなり省略されており、古代語の解読やラスボス戦など説明不足の印象を受ける。だが一方で、輝・未沙・ミンメイの三角関係は重点的に描かれ、観る者に強い印象を残す。未視聴者でも「宇宙戦争×恋愛ドラマ」として十分楽しめる作品になっている。
総評
今回はVODでの視聴だったが、観終えた後すぐに「4K円盤を購入したい」と思ったほど。機材を持っていないにもかかわらず検索してしまったのは、それだけ本作が当時の熱量を今も失わず、観る者に迫ってくるからだと感じる。
『愛・おぼえていますか』は、マクロスシリーズ未経験者にとっても「恋愛映画」として楽しめ、ファンにとっては「映像の奇跡」を再確認できる一本だ。昭和ってすげー。
映像美はこちらの公式動画で確認できます。
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